2020/05/02
「地域包括支援センター」ってご存知でしょうか?
高齢者の、そしてそのご家族の皆様の心強い味方なのですが、いったいどんなサポートをしてくれるのか、名前だけではわからないところがありますよね。
そこで今回は、地域の相談員として、限界集落の独居高齢者の訪問を行っていた経験のある元社会福祉士さんに、「地域包括支援センター」ってどんなところなのか、詳しく解説していただきました。
実際に地域包括支援センターにお勤めしていた方の生のお声を聞いてみましょう。
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今回は「地域包括支援センター」について詳しくお伝えします。とっつきにくい名前ですが、どの市町村にも設置されている意外と身近な、頼りになる高齢者の相談窓口なんです。
地域包括支援センターってどこにあるの?
「え、見たことないけど?」という方も多いと思いますが、実は1つの中学校区に1つぐらいの割合で設置されています。役場内に設置しているところ、病院・特別養護老人ホームなどを運営する社会福祉法人などに委託して設置しているところのほか、広島市段原地域包括支援センターのようにショッピングモール内に設置されているところもあります。
ぐれいとふる・まざーの事務所がある和歌山市では、市内15箇所に地域包括支援センターがありますが、やはり設置場所はさまざまです。城北センターや新南センターのようにまちなかのビル内に入っているところもあれば、名草のセンターは病院の中、雑賀はデイサービスに併設しています。
地域包括支援センターの場所は自治体のホームページや福祉担当部署への問い合わせでわかるほか、全てが掲載されているわけではありませんが厚生労働省の介護事業所・生活関連情報検索でも調べることができます。「実家の担当センターはどこかな?」と気になった方は、ぜひ探してみてください。
厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/
地域包括支援センターってどんなところ?
さて、地域包括支援センターは、簡単にいえば65歳以上の高齢者のためのよろず相談窓口です。健康のこと、お住まいのこと、ご家族のこと、お金のことなど、生きていく上で困りごとはたくさんありますが、困っているときはどこに相談して、何から片付ければいいのかわからなくなります。また、「それはうちの担当じゃないです」とたらい回しにされるのも、さらに困っちゃいますよね。ワンストップで相談ができるよう設置されているのが地域包括支援センターで、高齢者本人からだけでなく、家族や近隣住民からの相談も受け付けています。
どんな人がサポートしてくれるの?
センターには介護保険に詳しい主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)、医療・保健に詳しい保健師または看護師、福祉全般に詳しい社会福祉士または社会福祉主事が各1名配置されており(地域により、人数が多いこともあります)、3職がチームとなって、それぞれの専門分野を生かし、利用できる制度やサービスの紹介のほか、サービス利用に向けての支援や、困りごとを解決するために力になってくれる機関へのつなぎも行います。
例えば、認知症が疑われて、訪問販売で何度も高額な買物をされている方がいたとしたら、消費生活センターや、認知症の専門医がいる病院、成年後見制度についての情報提供などを行うほか、必要があれば介護保険の申請を手伝ったり、民生委員の方への見守り依頼を行います。そうすることで、ご本人やご家族、周りの方と一緒になって、ご本人が地域で元気で暮らせるように環境を整えていきます。
なので、このページをご覧の、離れて暮らす親御さんのことが心配になっている皆様は、ぜひ一度、地域包括支援センターへ相談をしてみていただきたいと思います。
気軽に相談しても大丈夫?
「そんなことを言っても、心配ってだけで相談していいの?」という戸惑いもあるかもしれませんが、高齢者をめぐる環境は急激に変化します。少しでも引っかかるものがあれば、今後、親を支えていくための準備も兼ねて、地域包括支援センターに連絡をとってほしいと思います。
ある認知症専門医の方が「ご家族が認知症かもしれないって来院されるころって、専門医からみたらかなり進んでいるんですよね…。もっと早く来てくれれば手を打てたのにって思うこともあるんです」とおっしゃっていたことがありました。私も地域包括支援センターで勤務していたころ、同じことを思っていました。
子どもは親にいつまでも元気でいてほしいもの。だから、きっと元気なはずだ、まだ大丈夫だと思ってしまいがちで、それによって心身の変化のサインを見落としてしまうこともあります。そのため、毎日元気に暮らしていると思っていたのに、ある日突然いなくなって遠いところで警察に保護された、久しぶりに行ってみたらごみ屋敷のようになっていた…ということも起きてしまいます。
少しきつい言い方ですが、「ある日突然親が変わってしまった」のではなく、「ある日突然、親が変わってしまったことに子どもが気づく」のです。ご本人の心身の状態が悪くなればなるほど、打てる手は少なくなっていきます。そうなる前に、「まだ元気なんだけど、ちょっと心配」ぐらいでの相談をおすすめします。
地域包括支援センターから得られる情報
早めに地域包括支援センターとつながっておくことで、離れていても親の周りにどんなサービスがあるか、またはないのかがわかります。地域包括支援センターは、地域の福祉サービスのほか、公共交通(コミュニティバスがあるかないかなど)や病院の情報、NPOやボランティア団体が行っているサービスなどの情報を持っています。そうした情報を知り、親の現状と照らしていくことで、今後の見通しも立てやすくなります。
例えば、車を手放しても買物や通院に行けるかどうかが予想できていれば、運転が怖くなってくる前に免許返納について親と話し合う時間も持てる、というわけです。
そして、地域包括支援センターにご自身の連絡先を伝えておくことで、もし親に異変があって、地域包括支援センターにその情報が入ったときにスムーズに連絡をとり合えます。私自身、先代の社会福祉士が10年前に受けた相談の記録のおかげで、スムーズにご家族に連絡をとることができ、何とか丸く収められたケースもありました。
地域包括支援センターでのご対応が難しいケース
ところで、地域包括支援センターはよろず窓口としていろいろな相談に乗りますが、なにぶん1中学校区当たり3名しか配置されていません(先述の通り、地域によってはもう少し多いところもあります)。公的な機関でもあるため、できること、やれることには限りがあります。
例えば、「何となく不安だからまめに来てほしいなあ」という方や、「困りごとはないんだけど、一人暮らしで寂しいからおしゃべりがしたい」といった方の場合。何かと悩みごとが多く、心身ともに急激な変化が起こる高齢期は不安を抱える方も多くおられます。心の部分、不安に寄り添うものがあれば、ご本人たちの生活はより良いものになりますが、地域包括支援センターで対応できるのかといえば、難しいと思います。こういった部分は、民間の見守り電話等のサービスや、傾聴ボランティア等にお願いするのも一つの方法かと思います。
勤務時は地域の方からさんざん「名前がわかりにくい!」と言われた地域包括支援センターですが、無料で相談でき、相談の秘密もしっかり守ってくれます。親と離れて暮らすお子さん世代の強い味方ですので、気がかりな部分があれば、ちょっと勇気を出して相談してみてください。