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立ち上がれない原因(体のメカニズム)と改善の運動

time 2020/05/11

立ち上がれない原因(体のメカニズム)と改善の運動

昔は当たり前にできていた椅子からの立ち上がり。
いつの間にか「よいしょ」と声を出しながら、かなり気合を入れて立ち上がっている人をよく見かけます。

「立ち上がる」という動作に、不自由さを感じていませんか?

そのような場合はイエローカードです。
日常生活において、立ち上がり動作が不自由になってくると、生活範囲が椅子の周辺になってしまいがちです。すると、立ち上がる機会が減り、さらに立ち上がりにくくなるといった悪循環に陥ることがよくあります。さらに、転倒や椅子からの転落にも繋がり、股関節や腰骨の骨折を起こしてしまう原因となり得ます。

そうならないために、立ち上がり動作についてしっかり考えていきましょう。

 
立ち上がり動作とは?(一連の流れ)

通常の立ち上がり動作は、大きく3つのステップで分かれています。
それぞれどのような動きをするのでしょうか?

STEP1 お尻を浮かす準備
椅子に座っている状態からお尻が椅子を離れるまでのことを指します。
このステップでは、
①踵(かかと)を膝の位置より手前に引く
②股関節を曲げ上半身を倒し重心を前へ
③徐々に体重をお尻から足の裏へシフトする
という動作が必要になります。これらの動作は、どれか一つでもできなければスムーズな立ち上がりはできません。お尻を浮かす準備をしっかり行いましょう。

 
STEP2 お尻を浮かす
さらに身体を前に倒し、重心を前に移動させます。体重を全て足の裏に移動したと同時にお尻が浮きます。このステップで必要なことは、お尻を浮かす瞬間の筋力です。この時は太もも前面の筋肉、脛(すね)の筋肉を使います。

 
STEP3 立つまでの伸び上がり
STEP1~STEP2では膝や股関節を曲げていましたが、これらの関節を伸ばすのがSTEP3です。このステップでは、伸び上がるための筋力(ふくらはぎ、太もも、お尻、背中)が必要になります。また、真上に伸び上がるためにはバランス能力も大切です。

 
なぜ、立ち上がりにくくなるのか?

若い頃は立ち上がることなんて当たり前にできていたのに、歳を重ねると不自由さを感じてしまうのは、なぜなんでしょう?
それには、以下の3つの理由があります。

1. 筋力が低下する
筋肉量は個人差があるものの、20歳と70歳で比較すると30%も減少がみられます。40歳代までは筋肉量は横ばい傾向ですが、50歳代から大幅に減少します。さらに、加齢による筋肉量の低下は下半身から始まります。
立ち上がり動作には下半身のほとんどの筋肉を使うため、これらの筋肉それぞれの力が弱くなると、当然立ち上がりにくくなってしまいます。

2. 関節が曲がりにくくなる
立ち上がり動作に必要な関節は、膝や股関節だけではありません。足首の関節も必要なんです。必要となるのは、足首の関節を脛(すね)側に上げる動作で、これはSTEP1の踵(かかと)を引くことに関係しています。そのため、膝、股関節、足首の関節の曲げ伸ばしに障害があった場合は、立ち上がることに不自由さを感じるようになってしまうんです。

では、立ち上がり動作の場合、それぞれの関節が、どの程度の角度に曲がらなければいけないのでしょうか?写真と合わせてご覧ください。

膝:90°~100°
股関節:80°~120°
足首の関節:5°~20°

この3つの関節が曲がる角度が、上記の角度以下の場合は、手すりなどを使用し、身体を引っ張りあげながら立ち上がる必要があります。

3. 姿勢が丸くなる
高齢者によくみられる座り方として、背中や腰が曲がりお尻の後ろで座っている(仙骨座り)方が非常に多いです。この仙骨座りをしている場合はSTEP1の「股関節を曲げ、上半身を倒し、重心を前にする」ことが難しくなります。

 
椅子の座面の高さは関係あるの?

座面が低い椅子と高い椅子でどちらが立ち上がりやすいでしょうか?
それはもちろん、高い椅子です。

高い椅子は、低い椅子と比較して、関節を曲げる角度や筋力が少なくても、立ち上がることが簡単にできます。実際にやってみると分かるのですが、20cmの座面と60cmの座面とでは全然違います。日本の椅子の座面は一般的に地面から40cmの高さになっていますが、丁度良い椅子の高さは身長によって変わります。

自分にとって丁度良い高さがわからない、という方は、下記の式を使ってみてください。これは「座面の丁度良い高さを見つける式」です。

座面の高さ=身長(cm)×0.25-1
例:160cmの方→160×0.25-1=39cm

たとえば、身長が160cmの方の場合は、39cmが最も適している座面の高さ、ということになります。もしこの高さで立ち上がりにくい時は、少しずつ高くして、自分に合った高さを探してみましょう。

ただし、あまり高すぎると、楽に立ち上がれても、椅子に深く座った際に足が浮いて転落のリスクが上がります。ご注意ください。

 
改善のしかた

まずは、生活環境から見直してみましょう。
先ほど話題に出た、椅子の座面の高さ調節もそうですし、動かない椅子(キャスター付きなどの椅子ではない)であるかどうかも重要です。また、手すりなど、立ち上がった際に支えになるものがあるとさらに良いです。

スムーズな立ち上がり動作を目指す場合には、筋力トレーニングは欠かせません。それぞれの筋肉を鍛えるのも1つの方法ですが、オススメなのは、立ち上がり動作を反復して、何回も何回も行うことです。それによって、立ち上がり動作に必要な筋力がつきますし、立ち上がり動作自体の復習もできます。

また、問題点も見つかりやすいです。介助が必要な場合は、介助者が横に立ち、STEP1、STEP2のときに背中を前に誘導し、STEP3では少しお尻を持ち上げるお手伝いをすると良いです。
朝10回、夕方10回から始めてみましょう。

段階別の練習としては、
STEP1、STEP2の動作時に不自由を感じる方は、各ステップそれぞれの動作の練習を、STEP3の動作で伸び上がりにくい、ふらつくといった方はスクワット、タオルギャザーを行いましょう。

スクワットの仕方として、お尻を突き出し、膝が90°曲がる程度で行います。これも朝10回、夕方10回から始めてみましょう。

タオルギャザーは、足の指で地面を掴む練習です。座った状態で、濡らしたタオルを足の指でたぐり寄せます。タオルギャザーは立ち上がり動作だけでなく、転倒予防のバランス訓練にもなります。また、テレビを見ながらでもできるとてもお手軽な訓練方法なので、ぜひ積極的にやってみてください。
タオル全体をたぐり寄せたら1回が完了。これを5回やってみましょう。

 
 
 
いかがでしょうか?
一概に「立ち上がる動作」といっても、いろいろな筋肉と関節の動きが組み合わさって、スムーズに動くことができていたんだなあというのがお分かりいただけたのではないかなと思います。

それぞれの動作も、運動としてはさほど激しくないとはいえ、毎日続けるというのは大変かもしれませんが、継続は力なり。スキマ時間にコツコツと試してみていただけたらと思います。

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