2020/05/02
ちょっと調べものをしていましたら、興味深いものを見つけました。
内閣府が出している、下記のページなのですが、
I 高齢者を取りまく現状|平成29年交通安全白書(概要) – 内閣府
https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/h29kou_haku/gaiyo/features/feature01.html
第2図をご覧ください。
これは平成18年から平成28年までの10年間で、運転免許を持っている75歳以上の高齢者の方の人数を表しています。
平成18年が258万人で、平成28年が613万人です。ざっと2.37倍の伸びです。それにしても10年で2.37倍ってすごい増え方ですね。まさに高齢化社会極まれりというところでしょうか。
いっぽう、ちょっと下のほうになるのですが、第11図をご覧ください。
これは75歳以上の運転者の死亡事故の件数と割合です。
ちょっとややこしいので説明しますと、件数というのは文字通り75歳以上の高齢者の方が起こした死亡事故の件数で、割合というのは、年齢に関係なく死亡事故全体に占める75歳以上の高齢者の方による死亡事故の割合です。
件数については、内閣府の言葉を借りれば「ほぼ横ばい」です。平成18年に423件だったのが平成28年は459件、その間でこぼこしながら、10年でざっと1.08倍です。
割合については、平成18年が7.4%だったのが平成28年には13.5%と6.1ポイントも上昇しています。ものすごい上がり方です。
運転免許を持っている75歳以上の高齢者の方の人数は10年で2.37倍になっているのに対し、75歳以上の運転者の死亡事故の件数は10年で1.08倍です。
割合については、たぶん、人口構成が変わってきて高齢者の人口が激増しているのが原因かもと思い、下記の表2で見てみました。
高齢者の人口 – 総務省統計局
https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1131.html
ドンピシャの年は書かれていませんが、総人口に占める75歳以上の割合は、平成18年に最も近い平成17年(2005年)で9.1%、同じく平成28年に最も近い平成27年(2015年)で12.8%と、3.7ポイント増加しています。やはり高齢者人口の増加が原因かなとも思いますが、死亡事故の割合と比例しているわけでもありませんので、ここはどう見たらいいでしょうか。
これらの数値を見ていて、ある程度の方向性として分かることは、
・免許を保有している75歳以上の高齢者の人数は右肩上がりに増えてきているが、事故件数はそれに比例して上がっているわけではなく、
・むしろ、75歳以上の運転者が死亡事故を起こす割合(分母は75歳以上の免許保有者の人数、分子はそのうち死亡事故を起こした高齢者)は減ってきている。
「75歳以上とはせずにもっと高齢者の層を細分化したほうがいいのかも」
「人口割合よりも免許保有割合のほうがいいのかも」
「75歳以外の人口も見たほうがいいかも」
などなど、超文系の私には、統計分析は生クリームを食べるよりも難しい事柄ですので、もう結論に行きます。
近年、「高齢者の運転が危なくてしようがない」とか「免許を取り上げたらいいのに」のような、高齢者の運転にネガティブなコメントが多く見られます。
上記を見る限り、実際のところは、悲しい事故はものすごく件数が増えているわけではなく、むしろ減っているようにも見えます。
なんだかとても増えているような印象を受けるのは、テレビやインターネットなんかで高齢者が運転する車による悲しい出来事がとてもクローズアップされ、それを何度も繰り返しているためかなあと思います。
高齢者の運転は、身体の衰えという点で若い年齢層の運転よりも危ないとは思いますが、でもそれを「高齢者の運転=危ないのでダメ」とはせずに、バリバリの高齢化ばく進中の社会なのですから、もっと高齢者の方でも運転がしやすい、悲しい事故が減るような車や環境やその他の手段が作れたらいいのになあと思います。
また、高齢者の超ゆっくりな運転に付き合える心の裕福さを持ったドライバーが増えればいいのになあと思います。
あなたも私もいつかは高齢者で、現代の高齢者はいつかのあなたや私であるわけですしね。
「車は愛を乗せて走る」とは、うまいコピーです。