2020/05/02
高齢者の誰もが経験するお悩みの1つ、膝の痛み。
対談の前編では、痛みが起こる原因と、そこから派生する生活への影響をお伝えしました。
前編はこちら→高齢者 膝が痛くて歩けないと・・・~ぐれいとふるリハビリ対談 前編~
ここからは後編です。膝の痛みを緩和させるためには、膝への負担を和らげる必要があるというお話から筋力維持の大切さなど、抑えるべきポイントを丁寧にお伝えしています。
ぜひお読みください。
「筋力を上げて、脂肪を落とすことが求められる」
―― では、どういうふうにして痛みを緩和させていくか、変形性膝関節症のネガティブな部分を大きくしないようにするにはどうしたらいいか、というところですが、広瀬さんがおっしゃっているのが、まず、何よりも体重を減らすことなんだということですね。歩行時で体重の3~4倍の負荷が膝にかかる、階段の昇り降りでは6~7倍もの負荷がかかるということで、体重を落とすことで負荷が極端に減るということですよね。
広瀬 そうです。
―― まず、体重を減らすとなると、脂肪を落とすのか、筋肉を落とすのか、両方落とすのかという、脂肪と筋肉の兼ね合いになってくると思います。現役世代のように、例えばハードなトレーニングをして脂肪だけを落とす、少しきつめの食事制限をして脂肪だけを落とす。本来であれば、これが望ましいと思うのですが、70代を過ぎて、脂肪だけを効率良く落として、体重が軽くなることで膝が喜び、筋肉が残る、あるいは、強化されることで歩きやすくなるということは実現が可能なものなんですか?
広瀬 結果から言うと、可能です。もちろん体重が減れば良いというわけではなくて、やはり脂肪を落としていかないといけません。筋力を上げて、脂肪を落とすというのが求められるところです。若い人と同じように、食事は高たんぱく、低カロリーを意識し、糖分を少し控えるというような、脂肪になる原因を口から入れないという形の食事療法が必要になってきます。結局、動かなければ筋力はどんどん弱くなっていってしまいますし、脂肪もそのまま、もしくは増えていきますので、運動をして筋力は維持しつつ体重を落としていく、という感じですね。運動は、あまりゴリゴリするわけではなくて、有酸素運動として、例えば歩いたり水泳だったり、全身を使うような運動を行っていって、食事制限をするという形ですね。少し運動量を増やして、食事に気を付けると、体重は減っていき筋力も維持されると思います。
―― そういう意味では、現役世代の体の絞り方を、少し緩やかにしたような感覚ですかね。
広瀬 それでいいと思います。
―― あまり極端にすると、体に良くないといいますか、なかなか体がついて行きづらいですもんね。
広瀬 そうですね。筋肉がびっくりしてしまって、違うところを痛めてしまう可能性も考えられますし、ゆっくりゆっくり、徐々に徐々に、という形で良いと思います。
「これから、どう動いていくか。効率良く体重を減らしていきましょう。まずは、そこからですね。」
―― それでいくと、例えば、割とふくよかな方であれば、長い時間をかけて体重を1キロ、2キロ減らすことは可能だと思うんですよ。もともと痩せている方が、膝のことを考えると体重を減らしたほうが良いときというのは、体重減らすほうをとるべきですか?それとも、あまり無理に体重を落とさないほうが、バランスとしては良いものなんですか?
広瀬 僕の経験上、痩せている方で膝の痛みを訴える方は少なかったです。ただ稀に、昔は太っていて、年をとって痩せたという方で、膝に痛みを訴える方もいらっしゃるんですが、そういった方は、ある程度、脂肪の量はもう少なくなっていますので、筋力をつけるトレーニングになっていきます。
―― 今のお話ですと、膝が痛い方というのは、やはりもともと厚みがある方ということになるんですね。
広瀬 そうですね。若いときからの蓄積になってきますので、記事にも書いてあるように、一度、すり減ってしまうんですよね。なので、どんどんすり減っていく、という感じなので。
―― ある種、元に戻らない消耗品っていうことですよね。
広瀬 そういうふうに見ていただくと、すごく分かりやすいかと思います。
―― ということは、厚みのある方は、厚みが薄い方に比べると、その消耗品をこの数十年で使ってきてしまっているということですね。
広瀬 上から重たいものを乗せてすり減るか、軽いものを乗せてすり減るかという、すり減り方の違いだと思います。
―― では、厚みのある方だと、もしかしたら、今は痛いって言ってなかったとしても、近々そういう状況にでくわす状況になるかもしれないですよね。
広瀬 はい。やはり消耗品ですので、どこの段階で痛みが出てくるかです。
―― 当然、脂肪や筋肉の多い少ないというのは、個人差が大いにありますけれども、関節そのものが強い人と弱い人ですとか、もともとの生まれ育ってきた膝の形状で差があるものなんですか?
広瀬 そこはあまり関係ないと思います。もともと運動していて、靭帯をやってしまったとか、昔、半月板損傷とか、膝の病気になってしまった人などは変形性膝関節症になりやすいです。
―― やはりどうしても環境なんですね。筋肉の多い少ない、脂肪の多い少ないも、いわば環境ですよね。
広瀬 そう思います。今までの環境ですね。
―― 今までのことはもう仕方がないとして、これから、どう動いていくか。効率良く体重を減らしていきましょうということ。まずは、そこからですね。
広瀬 そうですね。
「筋肉って強いゴムと思ってもらえれば。」
「そのゴムが太ければ太いほど、制御が効くということですね。」
―― 体重を減らすということと、筋肉をつけるということについてなんですが、もう1つの記事の運動編のほうで、例えば、大腿四頭筋や内転筋群に筋肉をつけることで膝がサポートされるんだ、ということですが、大腿四頭筋と内転筋群を鍛えて太くすることで、なぜ膝がカバーされるんですかね。メカニズムとしてはどういうふうになっているんですか?
広瀬 変形性膝関節症というのは、O脚変形とX脚変形といって、O脚になっているかX脚になっているかという変形の仕方があるんですが、日本人は生活様式的にO脚変形する方が多いんです。骨の曲がっていくベクトルっていうのでしょうか、それを制御してくれるのが、内転筋群と大腿四頭筋の筋肉です。そして大腿四頭筋でも、特に内側の大腿四頭筋が、O脚変形であった場合の、外側に骨が曲がっていくのを制御してくれる筋肉ですので、そこを鍛えていくと良いんです。
―― バネみたいな感覚ですかね。
広瀬 筋肉って強いゴムと思ってもらえれば。なので、グッと引っ張り、内側に引っ張り込んでくれる筋肉が内転筋群と大腿四頭筋なんです。
―― そうか。そのゴムが太ければ太いほど、制御が効くということですね。筋肉が少ないと、ガッチリ骨などに頼ってしまうことになりますもんね。だから筋肉があったほうが良いということなんですね。
広瀬 そうです。
―― ちなみに、その大腿四頭筋も内転筋群も、太ももの筋肉ですが、膝から下の筋肉はそこまで重要ではないんですか?
広瀬 膝をまたぐ筋肉というのが、あまりないんですよね。膝から下の筋肉で、ヒラメ筋や腓腹筋などはよく聞くと思います。腓腹筋は膝をまたぐ筋肉ですが、ヒラメ筋などは膝をまたがない筋肉で、どちらかというと、膝より下の筋肉は、足の関節を動かしたり、足の指の関節を動かしたりするような筋肉なので、膝の関節とは、そこまで関係がありません。
―― そうなると、変形性膝関節症がと限定しなくても、人間の動きのメカニズムの中では、膝から下の筋肉はそれほど重要度が高くないんですね。
広瀬 膝に関しては、そこまで重要ではないと思います。
―― ここまで、変形性膝関節症がどういったものであるかというのをお話しいただきました。体重を減らすということが重要で、筋肉は落とさず、脂肪を落とす。ただし、高齢だから緩やかに緩やかにということで。では今度は、どういうふうにトレーニングをしたら良いのか。膝をサポートしながら、筋肉を鍛えていったらいいのか。体重を落としていったらいいのか。そういったところをお話ししていけたらなと思ってますので、引き続きお付き合いをお願い致します。
広瀬 お願いします。
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by 高齢者 膝が痛くて歩けないと・・・~ぐれいとふるリハビリ対談 前編~ | 高齢者の見守り電話ヒアリング専門 ぐれいとふる・まざー 2020年10月15日 3:03 PM