2020/05/02
若い頃は軽やかに走っていたのに、最近では膝が痛くて動くことが億劫になっていませんか?
膝が痛くなると、椅子からの立ち上がりや歩行がしにくくなり、生活範囲が狭くなります。生活範囲が狭くなると、外出の機会が減り、家の中でも身体を動かさなくなってしまいますし、またそうすると、筋力や体力、持久力が低下し、体重が増え、さらに膝に負担がかかり、痛みが強くなってしまいます。さらには、閉じこもりや認知症にもつながってしまう可能性があり、介護が必要な状態になりかねません。
そういった事態を避けるためにも、まずは、膝の状態を知ることが大事です。
膝が痛くなる原因
膝が痛くなる場合、以下のことが原因として考えられます。
<膝の痛みの原因疾患>
①変形性膝関節症
②半月板の損傷
③骨壊死
④関節リウマチ
⑤痛風・偽痛風
これらの中で、ケースとして圧倒的に多いのが「①変形性膝関節症」です。50歳以上の男性の54%、女性ではなんと75%の人が変形性膝関節症と言われていて、推定患者数は約3,000万人もいると考えられています。比較的高齢で、徐々に膝の痛みが出てきたという方は、この変形性膝関節症に当てはまる可能性が高いです。
今回は変形性膝関節症にスポットを当ててみようと思います。
まずは、健康な膝関節の構造を見てみましょう。
上のイラストのように、太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)の先端には軟骨がついていますね。この二つの骨を靭帯と半月板で固定し、支え、ヌルヌルの滑液によって動きをスムーズにしています。これらの関節全体を関節包で覆っています。これが簡単な膝関節内の構造です。
変形性膝関節症の構造上の変化
では、なぜ年齢を重ねると変形性膝関節症になる人が多いのでしょうか?その答えは「長年の酷使」にあります。長年の膝への負担が積み重なり、ついに膝が悲鳴をあげた状態なのです。
関節内の軟骨は、長年酷使することによって擦り減っていきます。履き古した靴の靴底をイメージしていただくと、わかりやすいです。使えば使うほど摩耗は早く、どんどん削れていってしまいます。
※画像をクリックすると拡大されます。
軟骨の擦り減りは、体重の重さによっても加速します。膝関節には、歩行では体重の3~4倍、段差の昇り降りでは6~7倍もの負荷がかかっているんです。
たとえば体重が1kg増えたとすると、歩行では3~4kg段差の昇り降りでは6~7kg、膝への負担が増えているんです。つまり、若い頃から体重が重めだった人ほど擦り減りが早いというわけです。
軟骨が擦り減ってくると、太ももの骨とすねの骨が直接ぶつかってしまいます。それによって、骨棘(こつきょく)という骨のトゲができてしまいます。
骨棘ができるまでに進行すると、じっとしていても膝が痛むようになってしまいます。すると、関節の動きが制限され、立ち上がることや歩くことなど、日常生活が困難になってしまいます。
このように骨や関節、筋肉の衰えが原因で立つ、歩くことがしづらくなった状態をロコモティブシンドロームと呼びます。介護保険での要支援になった原因の1位が関節疾患であり、健康寿命が縮まる原因の一つと言われています。
また、進行期になると、しばしば「水が溜まる」といった症状が起こります。これは、擦り減った軟骨がはがれ、その欠片が原因で炎症を起こし、関節液を過剰に分泌した状態です。
膝に水が溜まると、熱を持ち、膝が張った感じがします。水を抜くためには、整形外科を受診する必要がありますが、癖になることはありません。水を抜かずにそのままにしておくと、膝の構造に悪影響があるので、早めに抜くことをオススメします。
変形性膝関節症になってしまったら
残念ながら、一度擦り減ってしまった軟骨が復活することはありません。変形性膝関節症になってしまった場合、進行度や痛みの具合にもよりますが、「保存療法」と「手術療法」の2種類の治療法があります。
<保存療法>
保存療法は手術を行わない治療法で、変形性膝関節症の基本となります。初期の頃は生活の改善や運動をするだけで、改善されることがよくあります。頻繁な段差の昇り降り、立ちっぱなしの作業、正座、和式便所の使用など、膝に負担がかかることはできるだけ控えましょう。
また、軟骨が擦り減っている分、筋肉を付けることが膝への負担軽減に繋がります。
太もも前面の筋力アップを意識して運動を行いましょう。ウォーキングや水中歩行で体重を減らすことも有効です。変形性膝関節症に肥満は大敵です。痛みが増したり強くなったりしない程度に、継続的に運動を行いましょう。
また、「ヒアルロン酸注射」や「ステロイド注射」という治療法をよく耳にすると思います。
簡単に説明すると、ヒアルロン酸注射は、もともと滑液の中に含まれていたヒアルロン酸が加齢と共に減少するため、それの補填を注射で行う、というものです。膝の中の動きをスムーズにするための潤滑油の役割があります。
ステロイド注射は、関節内の炎症を軽減する目的で使用されます。
<手術療法>
痛みや進行が軽い場合は保存療法が優先されます。ただ、痛みにより活動量が低下している、介護量が増えてきた、保存療法では限界がある、といった場合には、痛みを和らげ、痛くなかった頃の生活に戻すための最終手段として手術を検討します。
膝関節の内部洗浄などの内視鏡で行う軽めの手術から、関節内を人工の関節に置き換える人工膝関節置換術まで、種類は様々です。
どのような、手術を行うかは、医師としっかり相談する必要があります。ただし、感染症や骨粗しょう症の場合は、手術が行えない場合があります。
「変形性膝関節症」は、誰もがなり得る疾患です。しかし、なぜ起こるのか、どういう仕組みなのかがわかれば、治療や対策もかなりしやすくなるはずです。
正しい知識を持って、ご自身の膝の状態を確かめながら対策していきましょう。
コメント
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