2020/05/02
両親が年齢を重ねて高齢になったことで、若い頃と比べて頑固になったり、不機嫌な様子を見せることが多くなったりして、付き合いづらさや難しさを感じることはありませんか?
わたし自身も、自宅で暮らす高齢者の生活を支える仕事をするなかで、息子さんや娘さんが苦労されている様子を見たり聞いたりすることがよくありました。そうなってしまう理由がわからずに困っている方も多いと思います。
いったいなぜなのでしょうか。
頑固・不機嫌は、不安や無力感への恐れ
人は誰でも、加齢によって身体能力が低下します。すると、若い頃のように体が動かせず、自分の思っているとおりにはできなくなってしまいます。障害や病気があると、なおさら若くて元気な頃のようにはいかなくなるので、以前は普通にできていたことにも時間を要したり難しくなったりします。
同じように、加齢によって物覚えが悪くなったり、様々なことに対処する判断能力も低下してしまいがちです。認知症を患っているとそれらはより強まり、曜日や時間の感覚があやふやになって、同じことを何度も尋ねたり、物事の手順や状況の理解が難しくなります。
こうしたことを理由に、高齢者は自信を無くして、
「わたしは何もできない」
「人の世話になるようになって情けない」
と自分を否定してしまいます。そして、
「これからわたしはどうなっていくのだろう」
「このまま何もできなくなってしまうのだろうか」
など、不安や無力感に襲われて、心がネガティブな状態に陥りやすくなっていくのです。
とてもしんどい状況だ。助けて欲しい。
妙にかたくなで意固地になっていたり、不機嫌な様子というのは、SOSのサインであると言えます。
自分を守るための頑固さであり、不機嫌さ
年齢を重ねて、できないことが増えて、仮に重度の認知症を患ったとしても、人の自尊心は最後まで残ると言われています。
例えば、医師から「薬は残さず飲めていますか?」という問いに、飲み忘れた薬の束があるにも関わらず「大丈夫です、飲めています。」と答えてしまうのは、自尊心から出てくる言葉です。
忘れていることを「忘れているよ」と伝えれば、親は「自分を否定された」「こんなことも自分はできない」と感じてしまい、自尊心を守るために、頑固な態度や不機嫌な態度をとりがちになってしまいます。
もちろん、子供としては親をサポートしたい一心で、良かれと思って行動し、言葉で伝えます。それでも、心がネガティブな状態になっている親は、素直に受け止めにくくなっています。
「うちの親は気難しいのよね」
「何度言ってもケンカになるばかりでこっちの言うことを聞いてくれない」
と、どこかで聞いたことのあるありふれた子から親への声ですが、それは親の性格の問題ではなく、高齢になると「そういうもの」なのです。
サポートしても、親は親。あなたは子供の大原則
では、どのように接すればよいのでしょうか。
親は年齢を重ねて色々な能力が低下します。子供と比べて様々な能力が逆転してしまいます。
ここで大切なのは、立場まで逆転させてしまわないことです。
いくつになっても親としての、また一人の人間としての、自尊心を保ち続けられるように接してあげることが大切です。
自尊心うんぬんなんて、ふわっとしていますが、反対の見方をすれば、わかりやすいです。
あなたが小さいころ、親から「ああしなさい」「こうしなさい」と言われて、うんざりしたことはありませんでしたか?
自分ができると思っていることでも、できないかのように言われたり、もう十分に頑張っているのに、頑張れ頑張れと言われ続けたりして、いやな気持になりませんでしたか?
それと同じです。
できると思っていて、実際にはできないのだけれど、でも頭ごなしに子供から「できない」という前提で言われてしまう。優しく言われたとしても、でもどうも腑に落ちない。
畑仕事や縫物、家事・炊事、それぞれに親が積み重ねてきた人生がたくさん詰まっています。できることやわからないことが増えたとしても、昔から行なってきたことや築き上げてきた考え方は、体にも心にも染みついているので簡単に失いません。
それらを尊重することで、サポートの仕方も改善できるのではないかと思います。
つまるところ、大切なのは、
親に「共感」し、親を「肯定」することです。
親の安らぎとあなたの安らぎはワンセットです。
コメント
[…] 高齢者の頑固・不機嫌 こうすれば気にならない。 […]
by 親に共感し、親を肯定するテクニックなどない、残念ながら。 | 高齢者の見守り電話ヒアリング専門 The Grateful Mother 2020年2月1日 6:29 PM