高齢者の見守り電話ヒアリング専門 ぐれいとふる・まざー

「不機嫌」は高齢者特有とは少し異なる。

time 2024/12/24

なぜ「高齢者特有」と言われがちなのか

高齢になると、どうしても身体機能や記憶力・判断力などの認知機能が低下していきやすい傾向があります。さらに加齢による不安感(「この先もっとできなくなるのでは」という思い)や、人生の終盤を見据えた焦燥感などが合わさり、日常生活全般に「無力感」や「失う怖さ」が強まってしまいます。

身体機能の低下: 若い頃なら容易にできていた家事や外出、趣味などが思うようにできなくなる。
認知機能の低下: 物覚えが悪くなったり、状況を理解するのに時間がかかったりする。
将来への不安: さらに衰えてしまったらどうしよう、周囲の世話になり続けるのは嫌だ、等。
こうした複合的な変化が、高齢者をより強く“頑固”や“不機嫌”に見せる引き金になることが多いのです。したがって「高齢者によくある」現象として語られやすくなります。

 

若い世代・現役世代にも起こりうる理由

一方で、「能力が低下する」「自分の思うようにいかない」「人に助けを求めなくてはならない」という状況に直面したときの心理的変化は、年齢問わず誰にでも起こり得ます。たとえば以下のようなケースが挙げられます。

職場での役職交代や部署異動などによる戸惑い
それまで慣れ親しんだ業務やポジションを外れ、新しい環境に適応しなくてはならない。スムーズにこなせないことで「自分はできないのでは」「周囲に頼るのは格好悪い」と感じ、余裕がなくなって攻撃的になったり頑固な態度になったりする。

育児や介護、家庭内の負担が増えていくストレス
結婚や子育て、親の介護など、生活のステージが変わったときに「自分の時間がなくなった」「自由に動けない」と感じてイライラしやすくなる。結果として家族に対して不機嫌な態度をとってしまう。

ケガや病気で一時的に生活が制限される場合
事故や病気により身体機能が低下して思うように動けず、「まだ若いのに何もできない」という無力感を抱く。負い目を感じているために人の助けを拒否してしまったり、周囲にあたってしまったりする。

これらは、高齢者の方々が抱える「できないことが増えてしまった自分」への否定的な思いと本質的に同じ構図です。若くても「今まで当たり前にできていたことが急にできなくなる」あるいは「できているはずなのに上手くいかない」と感じたとき、人は自尊心を守るために頑固さや不機嫌さとして表面化させることがあるのです。

 

若かろうが年配だろうが「自尊心」を損なわれたときの反応は似ている

高齢者に限らず、人は誰しも「自分が尊重されていない」「自分のプライドが傷つけられた」と感じる場面では身を守ろうとします。

「自分がダメだといわれているようで傷つく」
「本当は分かっているのにできない悔しさがある」
「周りから“できないやつ”と思われたくない」
こうした思いが蓄積すると、家族やまわりの人に対して素直になれなくなり、頑なになったり、不機嫌さでコミュニケーションを取るようになったりしがちです。

大切なのは「寄り添い方」と「共感の仕方」

高齢者のケースでは、身体や認知機能の衰えによって“できないこと”が増えやすいため、子どもや周囲がサポートする場面がより多くなります。そのときに「上から目線で指摘する・命令する」「頭ごなしに否定する」といった接し方になれば、親の“自尊心”を傷つけてしまい、結果的にこちらの言うことをますます受け入れてもらえなくなります。

 

若い人・現役世代であっても、同様の「関わり方」が大切です。

一方的に否定・指摘するのではなく、まずは「大変さ」や「もどかしさ」に共感する

「今までできていたことができなくなるのって、本当に辛いよね」
「戸惑うよね。でも少しずつ慣れていこう」
相手のペースや思いを尊重する

やり方を指示しすぎるのではなく、相手が「どこまでなら自分でやりたいか」を尊重する。
提案するときは「これをやってみるのはどうかな?」と問いかける形にする。
失敗やできないことを責めない

うまくいかなくても「だからやっぱりできない」ではなく、「こうすればどうかな?」「次はこうしてみようか」と、前向きな言葉をかける。

 
 
高齢者特有とされる頑固さや不機嫌さの背景には、「体や認知機能の衰えによる不安」「何もできなくなる恐れ」「自分のプライドを傷つけられたくない」という心理があります。
ただし、この心理構造自体は高齢であろうとなかろうと同じで、現役世代でも「自分のキャパシティを超えた問題に直面し、自尊心が傷ついた」ときに同様の頑固さや不機嫌さが起こりえます。
接するときに大切なのは、相手の気持ちやペースを尊重し、「共感」と「肯定」を意識したコミュニケーションをとることです。
「なぜ自分に対してこういう言動をするのか?」という“表面”だけで判断するのではなく、そこにある“背景”や“心情”を理解しようとすることで、お互いにとって少しずつ関係性がやわらぎ、サポートがスムーズになるはずです。

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