2020/05/02
新型コロナウイルスの影響を受けて、国立長寿医療研究センターが高齢者の身体活動時間を調査したところ、感染拡大前の2020年1月と、感染が拡大していた期間中の4月を比べてみると、活動時間が3割ほど減少していることがわかりました。
参考資料:
高齢者の感染予防と身体活動の重要性(国立長寿医療研究センター)
https://www.ncgg.go.jp/hospital/news/20200528.html
皆様のお父様やお母様は、運動不足になっていないでしょうか?
運動不足は、健康な状態から介護が必要な状態になる要因のひとつなんです。
「最近、うちの親は歩くスピードが遅くて・・・」
「疲れやすくなった気がする」
「筋力が明らかにおとろえてきた」
と親御様の変化を感じたことがあるのなら注意が必要です。
これらの症状は、介護が必要となる状態に近づいているサインと考えられており、高齢者の多くはこうした変化を経て、介護が必要な状態へと至るケースが多々あります。
しかし、サインに気づいた段階で、早期に適切な支援や対応をすれば、健康な状態に戻ることができる場合もあります。そこで大切したいことのひとつが「運動」なんです。
高齢者が行う運動の目的と効果
運動するうえで大切なのは、目的と効果を知っておくことです。
特に高齢者が運動をする場合、周囲の人がこれらを正しく理解しておく必要があります。「目的とかけ離れた運動をしていないか」、「運動をすることで得られた効果」に日頃から注目してあげましょう。
運動の目的
・心肺機能を高め、体力や持久力を向上させる
・筋肉の柔軟性を高める
・関節の動きを改善させる
・筋肉量を増加させる
・転倒予防や歩行速度を高めるためのバランス能力をアップさせる
運動の効果
・身体能力の維持・向上
・血流がよくなり内臓の働きが改善する
・活動性が高まることで食欲が増進する
・気分の安定
高齢者にできる運動
厚生労働省は、健康づくりのための身体活動指針として、「アクティブガイド」という国民向けガイドラインを出しています。そこでは高齢者にオススメの運動も示されていて、その内容を踏まえて、具体的な運動例を考えてみました。参考にしてみてください。
アクティブガイドで勧められている運動
・楽ではないと感じる程度から少しきついと感じる程度の運動
・運動は1日40分以上(65歳以上)
・筋力を高めるトレーニングやスポーツなどを含めた身体活動
具体的な運動の例
・ウォーキング(散歩、外出などの際に徒歩で出かける、階段の上り下りなど)
・水泳、水中歩行
・エアロバイク
・自転車をこぐ
・掃除や洗濯などの家事
・ストレッチング
・筋力トレーニング
・その他の有酸素運動
高齢者が運動をする際の注意点
高齢者は、若い世代と比べて心身機能が低下していることが多く、また疾患を抱えていることもあるので、無理な運動をしてしまわないよう注意が必要です。心配な場合は、運動を始める前に、「どういった運動」を「どれくらいの頻度」で行うのが適しているのか、かかりつけの医師に相談して、安全に取り組めるようアドバイスをもらっておくもよいでしょう
また、息子さんや娘さんなど、周囲の人が事前に親御様の体調を確認することも大切です。具体的には、血圧の確認(最低血圧が110mmHg以下、最高血圧が180mmHg以上の場合には運動を控えましょう)、発熱や下痢などの体調不良が起きていないかなどです。場合によっては、体調に異常があってもうまく言葉にできないことがあるので、顔色や呼吸がいつもと違わないかも要チェックです。
適度な休憩や、運動中・運動後の水分補給も非常に大切なポイントですので、親御様の体調・状態に合わせて、休息を促してあげてください。
「運動をしてみよう」という気持ちへ持っていく方法
さて、ここまでは親御様が自主的に運動へ取り組んでくれることを前提にお話してきましたが、必ずしもそうとは限りません。身体機能が低下すると、動くこと自体が億劫になりやすいので、どうしても運動することに対して腰が重くなりがちな高齢者が多いのです。
とはいえ、無理やり運動を勧めても継続して通り組むことができないですし、中にはそのことが原因でケンカになり、親子関係がギクシャクしてしまう、なんてことになってしまうことも…。
「運動はしてほしいけど、勧め方がわからない」
「自主的に運動してくれるようにしたい」
と悩んでいる方の参考になるように、親御様が「運動をしてみよう」と思える勧め方と、その例をご紹介いたします。
○親の好きなことや生きがいに感じていることと運動をセットにする
「運動不足だからウォーキングをしよう」、「力が落ちてきたから筋力トレーニングをしよう」と直接的に勧めるのではなく、親が好きなことをする結果として運動ができている状況になるよう勧めてみましょう。
例
・畑の野菜へ水やりをするために、歩いて出かける
・ペットのお散歩
・デパートへ買い物に行く
・地域で行っている介護予防の催しに家族や友人と参加する
○運動の結果が親の好きなことにつながる
1つ目と同じで、運動をすることや身体機能の維持・向上を目的に勧めるのではなく、親の好きなことや趣味、生きがいに感じていることを行うために運動をしようと勧めてみましょう。
例
・好きだった旅行に出かけられるように、運動をして歩く距離をもう少し長くしよう
・昔よく通っていたレストランにご飯を食べに行けるように、運動をして体力をつけよう
・生きがいだった町内会のボランティア活動に参加できるように、運動をして元気を取り戻そう
2019年の統計では、日本に住む高齢者の平均寿命は、男性81.41歳、女性87.45歳となっています。長い人生の中で、健康な状態を維持し、その期間を延ばしていくことは、親が幸せな老後を過ごすためには重要なことです。
この記事が、親御様が運動に取り組むきっかけになったり、健康に過ごすことのできる体づくりの参考になったりして、親御様の老後を支えている皆様のお役に立つことができれば幸いです。